第69章

大島莉理はソファに身を沈め、会議室での一幕を思い返しては、ふう、と息を吐いた。

結局、言い出せなかった。

渡辺尚輝が急に戻ってきて話を遮られ、彼が用件を話し終えた頃には、こちらも口を開く勇気が消えていたのだ。

盗作騒動の件で弁護士を立てて訴える――それは、田中グループのため。

けれど、離婚のために弁護士を借りるとなれば、それは完全に私事だ。

田中辰哉は公私の線引きが徹底している。自分の頼みを、どこまで受け入れてくれるのか。正直、確信が持てない。

……まあ、もう少し待とう。

どうせ――まだ復讐が足りない。

田中尚哉は、いまがあまりに順風満帆すぎる。

子どもを失った痛み。あれは...

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